「キリギリス」

「キリギリス」

 

冬になったら寒くなったら

この喉はもう震えなくなるから

雪が降ったら夏を忘れたら

僕はもう、死んでしまうから

 

空を飛ぶための

羽はとっくに破けてて

高く跳ねるための

足は一本だけじゃ飛べないな

 

誰も僕の唄なんか聞いてない

道行くアリたちに笑われる

「馬鹿の一つ覚え」とけなされて

それでも歌うことしかできない

ああどうしようもないな

そう思うさ、だけど

歌うことだけが僕の一生なんだ

 

冬になったら寒くなったら

この喉はもう震えなくなるから

雪が降ったら夏を忘れたら

僕はもうすぐ死んでしまうから

 

枯れてしまっても

裂けてしまっても

血を吐いて今日も僕は唄を歌う

笑われても、けなされても、かすれていても、誰も聞いてなくても

構わないから、終わりだから、ただ歌うから

澄んだ空気を裂いた愛の唄