「花一つ」
「花一つ」
もうじき雪が解ける
差し込む光が温くなった
あいつは死んでしまっただろうか
夏草の匂いがよぎる
もうやめろ聞きたくもない
誰も歌なんて求めてない
暖かく暮らしていればいい
それでいいそれだけでいいと諭す僕を
あいつは笑い飛ばして
信じられないほど下手な歌で
風が吹けば飛ぶような声で
いつも一人で歌っていた
草原ぽつりねむの木の下
もうやめろ死んでしまうぞ
誰もお前を責めやしない
生きている、それだけでいい
それだけでそれだけでいいと願うけれど
あいつは息を吸って
信じられないほど下手な歌を
風が吹けば飛ぶような声を
澄んだ冬の夜空に飛ばす
雪原ぽつり星空の下
信じられないほど下手な歌を
風が吹けば飛ぶような声を
今日も僕だけ覚えている
草原ぽつりねむの木の下
君の亡骸と花一つ