流行り病に罹患した話

世間の流行には人一倍疎いくせに、先日某流行り病に罹患した。寮や外部団体での立場のこともあり、多くの人間に多大なる迷惑をお掛けしたのだが、それはまたさて置かせて頂くとして、某流行り病の恐ろしさを伝えることができればと思い記す次第である。 体の…

「凪を祈らない」

生きていることで常日頃感じている感覚を言葉にするならば、それは波打ち際に足を浸していることと形容できる。 僕はいつも水平線を眺めている。凪いでいる日もあれば荒れている日もある。ひときわ高い波に見えても、たかだか膝下数センチを撫でていくだけの…

「無力」

最近、昔ほどは「無力感に苛まれる」ことが無くなった。 きっとそれはここ最近で出会った人たちのおかげだと思う。そんなことをつらつら書こうと思う。 完璧になりたかった。 よくタスクを抱え過ぎだと言われるし、自分でもそう思わなくはない。(なんだった…

「むじゃ」

8月13日 山にくわがたをとりにいった。でもおとうさんがくれた「そうがんきょう」をなくした。さがしてたら「むじゃ」にあった。けむくじゃらで、なにかゆうと「むじゃー!」ってゆうから「むじゃ」。ひとりでないてたらくすぐられた。しかえししたら、や…

「一年後の夏」

昨年のちょうど今頃、病院から退院した。普通だったら入院するほどではないマイコプラズマ肺炎だったのだけれど、医者にかかった時には既にだいぶ進行していたこともあり、そのまま10日間ほど入院することに相成った。 倒れる少し前、夜10時から朝4時までひ…

「ヒスイの街にて」

「ヒスイの街にて」 4月25日 たどり着いた先は寂れた街だった。客待ちのタクシー運転手はあまりに暇を持て余したのか居眠りをしているし、駅前に目立つものといえばカラオケ屋くらいしかない。海へと続く商店街からはオルゴールの音が聞こえた。予約したホテ…

「どこかで聞いた歌」

冬を迎えつつある街の寒さは日に日に厳しさを増していく。そろそろ手袋を出そうなどと考えながら、かじかんだ手でポケットの中のカイロを握る。どこからかクリスマスソングが聞こえた。ふと目をやると、路沿いのレストランが既にツリーが飾ってあることに気…

「花一つ」

「花一つ」 もうじき雪が解ける 差し込む光が温くなった あいつは死んでしまっただろうか 夏草の匂いがよぎる もうやめろ聞きたくもない 誰も歌なんて求めてない 暖かく暮らしていればいい それでいいそれだけでいいと諭す僕を あいつは笑い飛ばして 信じら…

「キリギリス」

「キリギリス」 冬になったら寒くなったら この喉はもう震えなくなるから 雪が降ったら夏を忘れたら 僕はもう、死んでしまうから 空を飛ぶための 羽はとっくに破けてて 高く跳ねるための 足は一本だけじゃ飛べないな 誰も僕の唄なんか聞いてない 道行くアリ…

「迷惑な話」

山登りが趣味だった。 といってもそんな真剣な登山じゃなくて、標高500~800mの山を歩く程度。災害用のグッズが入ったカバンに、ドライフルーツを入れて。家の近くの山を回った。開けた斜面に一人で座って、水を飲みながらフルーツをかじる。ただ遠くの街を…

「ペンネーム」

憎たらしいほど空は晴れている。 「今この場所がどんなに曇っててもさ、どっか遥か遠くの空は絶対晴れてんだよ。」 あいつが自慢げにそう言っていた。僕はそっけなく返す。 「当たり前だろ、雲がそんなでかいわけないんだから。」 それを聞いたあいつは馬鹿…

空に

その瞬間、世界が音を忘れる。 刹那の沈黙ののちに、世界はまた誰かの音に満ちてしまうけど、その一瞬を狙って僕は遠くの君に言葉を飛ばす。 空に溶けた白い息は、いつかきっと雲になる。遠く遠くへ流れていって、もしも君の目に映るなら。この空でさえも僕…

「泡立草」

1. 初めて会った時、彼の声をどこかで聞いたことがあるような気がした。不思議なことに貴方の声を聴くととても落ち着くのだ。でも、どこで聞いたのかは思い出せない。 付き合って二年が経つ頃、彼の体は今や見る影もなく痩せてしまっていた。病室には黄色…

真っ黒なバイトの話

この前に体験したバイトの話。 ⅰ)応募段階「不用品搬出?オフィスの移転とかかな?」 この時点で勤務地を確認しなかったのは若干まずかった。というか、地図で確認したら何もないところではあったんだけど、どうせ農家の機材搬出とかかなとか思ってたのがま…

「神様の話」

ピアノを弾いている時、僕の隣に神様がいた。 僕が鍵盤を一つ弾く度、弦が空気を揺らす度、優しい表情で微笑みながら目を閉じるのだ。 神様が嬉しそうにしているのを見るのが、僕は好きだった。 だから一生懸命練習した。 指がどんなに疲れても、弾けないの…

『少年の話』

恵迪寮文芸部誌への寄稿作品。以下本文。 田舎の暮らしっていうものは、多分だけど世間一般に思われているほど楽じゃない。たまに、そういうお話は世に出るのだけれど。例にもれず、この話もそんな感じだ。 何が辛いかって、色々あるのだけれど、ありきたり…

政策

あるところに、そこそこの大きさの都市がありました。その都市は、将来の展望に悩んでおりました。そこそこ優秀な大学があるため、多くの学生が来るものの、彼らは卒業と同時に大都市へと出て行ってしまいます。 なんとか優秀な人材を繋ぎとめておきたい。そ…

バンコク見聞録〜その3〜

胃腸薬は必要です。やっぱり腹は壊しやすいし、あると便利だと思います。あと、気をつけなきゃいけないのが、トイレは意外と無いってことです。駅とコンビニには無いです。日本人からすると意外だと思いますが。(本当にヤバかったら駅員さんに頼み込むと職…

ひより系寮生の戯言

寮の話。 最初に断っておくけど、別に恵迪寮が嫌いなわけではないです。僕の友達の約半分が寮生なのは事実だし、生活費が安いおかげでめちゃくちゃ助かってるし。部屋にいつも人がいるのは安心するし、「ただいま」や「おかえり」が言えるのは幸せなことだと…

バンコク見聞録~その2~

交通事情編 主な交通手段は、大体三つです。バス・電車・タクシー(トゥクトゥク)。いずれも、特に時刻表とかがあるわけじゃなくて、道路を走っているのを捕まえる感じです。バスに時刻表がないのは、日本人にとっては意外かもしれない。僕は、結構合理的な…

バンコク見聞録~その1~

食糧事情編 今回は、他者に向けての文章にします。バンコクでの記録をもとに、タイへ出かける友人のために作成した報告書のような文章を改稿したものです。タイ(あるいは東南アジアの他の国)に出かける際などに、さらっと目を通していただけると嬉しいです…

カンボジア旅行記~その7~<終>

「笑顔」 この旅行記も、もうおしまい。 カンボジアでは、いろんな人の笑顔を見た。夢を語っていたおじさん、ジュース屋さんの親子。彼らだけじゃない。町で出会った人、トゥクトゥクの運転手、ホテルのオーナー。 「さすがは微笑みの国」って僕が言ったら、…

カンボジア旅行記~その6~

「世界」 今まで言及してこなかったけど、今回の旅行には同伴者がいた。二年生の女子の先輩と、その先輩が入っているサークルの後輩の男子、の計二人。僕はたいして英語が話せないので、二人にはたくさん助けられた。そもそも、旅行に誘ってくれたのは先輩だ…

カンボジア旅行記~その5~

「湖上にて」 トンレサップ湖という湖がある。雨季には湖の面積が大きくなって、乾季には面積が小さくなるという、不思議な湖。地図で見ると面白かったりする。 雨季には半端なく水位が上がるので(8メートルって言ってた)、現地の家は極端な高床式の家。…

カンボジア旅行記~その4~

「小エビの味」 重い話ばっかだと心が折れる。でもあと2~3日で書き終わりそうな気がする。夜も遅いので、今日は軽めに記す。 カンボジアと言えば、というか東南アジアと言えば...虫食文化がある。 辻道に一人の蜘蛛売り少年がいて、写真を撮りたかったん…

カンボジア旅行記~その3~

「いちどる」 書くのも読み返すのも凄く辛い。それでも、忘れちゃいけない。 はがき売りの少年たちの話。 今回の旅行先で買ったものの一つに、写真はがきがある。アンコール遺跡群が写されている数枚組のはがきだ。アンコール遺跡群を巡った日に、路上にいた…

コンセプト

自分の体験なんていう形のないものを自分の中にとどめておいても、いずれ忘れてしまうだけ。他人に話してみたり、文章化してみたりすることで、初めて自分で記憶の一つの形にすることができるのだと思う。 大人になった時に、この記録を見てどう思うのかはわ…

カンボジア旅行記~その2~

「夢」 カンボジアでは、いたるところでトゥクトゥクが走っている。タイでは、バイクと一体型になっている本物のトゥクトゥクに乗れるんだけど、カンボジアではバイクに荷台を括り付けただけの簡素な代物しかない。まあ揺れる揺れる。 てなわけで今夜は、歓…

カンボジア旅行記~その1~

「家族」 初めまして。ずっとまとめようと思いながら、書いてなかった旅行記を少しずつ書こうと思います。「その3」まではなんとなく構想してます。 今夜は、街角で出会った屋台の話。 カンボジアは、児童労働が多かった。この少女は多分10歳くらいだったと…