政策

あるところに、そこそこの大きさの都市がありました。その都市は、将来の展望に悩んでおりました。そこそこ優秀な大学があるため、多くの学生が来るものの、彼らは卒業と同時に大都市へと出て行ってしまいます。

なんとか優秀な人材を繋ぎとめておきたい。そう考えた政治家は、様々な人に策を求めました。ある人はこう言いました。「住み良い街を作ればいいんだ。」政治家は、バリアフリー政策を推し進め、街の人気は確実に向上しました。

しかし、「老後にも住みやすい街」とのイメージにより高齢者が多くやってきたため、雇用が生まれずに若者はやはり大都市へ。

ある人はこう言いました。「雇用を増やすべきだ。」政治家は工場を作りました。空港の近くに作られた工場は、団地を備えていたため確かに人口は増えました。

しかし、大学を出た優秀な若者はなかなか工場には就職しません。増えたのは、低所得層と外国人労働者のみでした。

頭を抱える政治家に、とある企業はこう言いました。「この土地から離れなくすればいいのさ。」首を傾げる政治家に企業は続けます。「3年待ってくれれば、確実に成果を出そう。」政治家はその企業に賭けることにしました。

企業はまず、大学生の生活に注目しました。大量のレポート、重なる夜更かし、サークル活動、彼らはとても多忙でした。そんな彼らが欲するのは、眠らなくても元気に活動できる方法だ。そう結論が出ました。

そして企業は度重なる研究の末、ついに開発しました。とても甘くて、それでいて眠くなくなる不思議な飲み物。そしてそれは瞬く間に、学生へと普及してのです。政治家への提案から、1年が経っていました。

2年が経った頃、政治家は企業に中間報告を求めました。実のところ、あまり成果が見られていなかったのです。企業はこう答えます。「貴方もこれを飲めばきっと分かります。」

訝しげに政治家はそれを飲みます。何の変哲も無い、普通の清涼飲料。「それを飲みながら、あともう一年だけ待ってみてください。」政治家は渋々従いました。

それから一年を経ると、瞬く間に成果が出ました。卒業した大学生が、そのままその都市で就職をするのです。政治家は企業を褒め称えました。「素晴らしい。貴社はこの都市の救世主だ。」企業は笑いながら答えます。「礼には及びません。我が社もかなりの収益を得られました。」

「いったいどんな秘密があるんだ。」政治家は尋ねます。企業は答えます。「それは企業秘密ですよ。それより、少し体調が優れないようですが、大丈夫ですか?」

政治家は一瞬ためらった後、「おっとすまない、今日の分を飲まないと。」机の引き出しを開いて、清涼飲料を飲み始めました。「これを飲まないと、1日が始まらない気がするんだ。」「そうでしょうともそうでしょうとも。」企業がニヤリと笑いました。

朝の都市を歩く人は、とても眠そうです。フラフラとしながら、彼らはコンビニに入り口を揃えてこう言います。

ガラナを、一つください。」 fin.

北海道で暮らす者しか知らないであろう炭酸飲料「ガラナ」。見た目はコーラだけど、もう少し薬っぽくてカフェインが効いてます。僕は時すでに遅く、これ無しでは生きられぬ体と成り果てました。めでたしめでたし。