空に

その瞬間、世界が音を忘れる。

 

刹那の沈黙ののちに、世界はまた誰かの音に満ちてしまうけど、その一瞬を狙って僕は遠くの君に言葉を飛ばす。

 

空に溶けた白い息は、いつかきっと雲になる。遠く遠くへ流れていって、もしも君の目に映るなら。この空でさえも僕のキャンバスだ。

 

白い紙切れにボールペンを滑らせる。月並みな表現で日々を綴り、再会を願う気持ちだけを押し込めた。君が読むことのない手紙だ。

そっと引き出しの奥底に隠す。

 

春の桜の下でまた逢えたなら。